長期休暇の宿題について

夏休み前、最後の勉強会では「夏の宿題」をテーマに。

まずは、みんなでこの夏、何を宿題として出す予定か、もしくは過去出したことがあるかを披露しあう。同じ職員室でずっと一緒にいるのに他学年のことはわからないもの。

文法・語法問題集のパートを決めてそこを演習
多読用の本を渡し、読んでこさせる(中テストや実力テストで読んでいるか確認)
夏休み明けの模試をみこんで、手作りの問題演習の冊子を渡す
映画をキャプション付きで見てきてもらい、感想を書いてもらう
単語集を暗記
英語の看板の写真を撮ってくる

などなど。

そのあとで、何が宿題でのポイントになるのかということを話し合う。
「夏休みは長いので、教員も欲張りになり、多くの宿題を出してしまいがち。でもそれで良いのか」、という意見も。でも、実際親からの要望もあるし、英語にずっと触れてもらわないのは困る、というのもある。

一方で「自分で弱点を考えて、自分なりのやり方で勉強してほしいよね、特に高2から上は」、という意見も。確かにそう。でも、じゃあ、彼らは宿題がないと何をするかというと、予備校の夏期講習の宿題を一生懸命やるわけなんだけど。

「出来合いの問題集を渡して、はい、やってきてね、というのも教員側にとってあまりにeasyなのでは」、なども。

色々考え方はもあるけど、やはり僕は長期休暇には宿題をしっかり出したいと思う。「しっかり」というのは、「たくさん」という意味ではなく「考えて」「手作り感のある」ものをという意味だ。僕自身はというと、この夏、内容的にも、難易度的にも高2の今だから読んでほしい、面白い入試問題を、学年担当の自分を含む3人の教員で選び、解答の解説も独自につけて冊子にして配布した。生徒は、出来合いの問題集ではないことで、手放しに喜ぶわけもないが、生徒のレベル、嗜好、集中力、間違いやすいところ、質問が多そうな設問、などをわかっている教員が解説を作るだけでも、彼らのためにはなると考える。

生徒に勉強してもらうには、こちらも労力をかけないといけないということだ。

夏はもう終わる。。。。2時間だけのバカンス。。。ほんと、かっこいいですこの曲。お聞きください。

大学で話をしてみた

学会のつながりで、先日大学で1時間分だけ、英語科教育法の授業で話をする機会に恵まれた。

まだ年度が始まったばかりの春の授業なので、授業実践にだけこだわらずに、「教師の仕事」、について語ってほしいと依頼をされた。

僕自身の今回の最大の興味は大学生に向かって話をすることだ。
高校3年生は教えているので、それほど歳は変わらないが、でもやっぱり新鮮だった。
なるべく飽きないように、ペアでのディスカッションを入れたり、意見を発表してもらったりした。
まだ、こちらと打ち解けあってはいなかったので、それほど活発な議論、とはいかなかったものの、それなりに活気があった。
とても、いい経験になった。また彼らとゆっくりと話をしてみたい。

講義をするに際して、もっとも考えたのは「もし、自分が英語の教員になる前にこういうことが聞きたかった」ことを話そうということだ。
それには、「教師としてやっておくべきこと」、「授業を組み立てる、とは」を語る必要があると考えた。

「やっておくべきこと」はこんなことを紹介した。

1.英語力、資格

2.なぜ教師になりたいのか、という自問自答
  なぜ企業ではないのか?
「企業では」、、、に対抗

これは、自分が教師なりたての頃、本当に思った。
たくさん時間のあるときに英語をしっかりと勉強しておくことは本当に大事。教員としての資質は様々必要だとは思うが、英語の先生は英語ができなきゃしょうがない。これは、意外と盲点で、英語に関しては一生勉強するのだけど、学生時代の「ため」は必要。

2番目のこともすごく大事。この質問にきちんと答えられないと、教師になってからきつい。
「授業の組み立て」に関しては、実際に案を作ってもらった。
自分としては生徒にはどんな英語力をつけてもらいたいかを考えて、それに従って授業案を練る。
この心がけは現場にいても忘れてしまうことがある。
これはしっかりと考えてから教員になってほしい、と伝えた。

とはいえ、眠そうな学生に「おい!」とも言えず。
携帯をいじる学生に嫌味も言えず、現場の長い教員ならではの本領は発揮できなかった。。。

僕は原点というとこの曲を思い出す。
全ての原点はここにあります。

考査前だから考えさせたい(コミュ英活動)

考査前、範囲は終わっているのでやろうと思えば自習にできる。
でも、英語はある意味で実技科目。
やればやるだけできるようになるのだから、自習はなるべく出さない。

本日で授業は終わりになるが、コミュ英の授業の最後は洋物の教科書の復習として、
関連の英語動画を見る。

そのあとで、前回アップした記事にも書いた"big question"に答えてもらう活動をした。
時間もない中、生徒はいいものを書いてくれていたと思う。

Questionは "What is discrimination?"
条件はワンワードで定義して、理由を端的に添える、ということ。

生徒の答えには面白いものがたくさん。(文法、語法などで誤りがありますが、そのまま)

わかりやすいものとしては、
Discrimination is prejudice.
People have discrimination without trying to know what kind of people he or she is. They may have really good characters, but people look down on them because of skin colors and appearance and so on.

この文章の中では、なかなか使うことない"prejudice"という単語が生き生きしている。


こんなものも。

Discrimination is satisfaction.
It’s because discrimination occurs when those who are weak want to be satisfied. By looking down on others, they would be contact with their situation.

これも納得のいく定義だと思う。


これもよく書けていたと思う。

Discrimination is justification.
People who discriminate other people are always thinking that “I’m correct,” and don’t accept difference. They discriminate to justify themselves.

この活動で見えてくるものは、彼らの語彙の発達がやっと彼らの思考に追いつき始めているということだろう。prejudice, satisfaction, justificationなど、こういう機会でもなければアウトプットする機会のない言葉たち。
その言葉が生気を帯びていく感じはとてもよい。


考査の準備で忙しいだろうけど、彼らがこの課題を与えられて、一生懸命に考えている顔を見ていると、本当に頼もしい。
このような活動はしっかりとやっていくべきであろう。

Big Question

授業が始まって数週間。
今のところ、授業はうまくいっている(と思う)。

最近意識していることは、基本のキなのだけど、生徒に自分の伝えたいことをしっかりと伝えようということ。
それから、生徒の気持ちに寄り添うことも大事にしようということ。

こちらも大人で色々考えていることもある。
親父になったということかもしれないけど、食べ物って大事だよね、とか差別ってなんだろね、とか。
こういうことを生徒には考えて欲しいと思っている。これは後ほど述べる。

それから、昨年度はとにかく自分の授業スタイルにこだわりすぎて、生徒との距離が離れてしまった気がする。
こちらの正義を振りかざし続けてしまった感じか。
英語をはこうやって勉強して欲しい、英語はこう使って欲しい、文法はこう考えて欲しい。
いっぱいあった。

でも今年は授業開きでアンケートをとって、生徒はどんな授業を望んでいるのかを聞いてみた。
それと自分の理想とする授業をどう組み合わせるかを考えるようにしている。

そんな気持ちで授業に臨むと生徒はこちらを向いてくれる気がする。

生徒に考えて欲しいことを意識させることについて。
前から気にしてはいたが、なんのためにこの目の前の文章を読んでいるのか、ということにを意識させることに関して
参考になる考え方を知った。アクティブラーニングで今注目されている、山本崇雄氏の『なぜ教えない授業が学力を伸ばすのか?』の中にヒントはあった。

その中で彼は新しいレッスンなどに入る時に黒板に英語で質問を書いておいて、その質問に最後に答えられるようにしておくというのだ。これは、いい!と思った。彼はその質問をBig qustionと呼ぶ。

早速、Landmark IIIで"Blood is Blood"という文章を読むことになった時にBig Questionを生徒に与えてみた。
この話、アメリカでは第2次世界大戦の時、輸血が必要であった際、白人の中には黒人の血を自分の体内に入れることを嫌うものが多くいたという話だ。

僕が提示したBig Questionは"What is discrimination?"というもの。あまりにも漠としているが、
何か生徒は考えながら読んでくれるのではないかと思ったのだ。

来週あたりには、それを生徒に簡単に発表してもらうつもりだ。楽しみである。

この調子で今年度も力まないで頑張りたい。力抜いてやる!、というとき僕はいつも楽器の上手い人を思い出す。
最近よく聞いているのは、トランペットの音色。Alison Balsomという人の演奏。本当に力が入ってなくて、綺麗な発音。是非聞いてみてください。

教科書をどう使うか

もう少しで、新しい年度が始まる。

今年度は高校2年生を担当。コミュ英と英表。

昨年度はうまくいかないことも多かった。
うまくいかなかったことを挙げてみると

1.英語を得意とする生徒には多少退屈になってしまった
2.雰囲気をうまく作りにくいクラスを1年間変えられなかった

この二つが大きかったように思う。
1に関しては教科書を抜きには語れない。

教科書にはバイアスがかかる場合がある。
教科書は簡単。教科書は受験の役に立たない。単純に覚えたりするのが嫌い。
ここまでは生徒の思い。

内容が浅い。
これが僕の思い。

生徒の思いに関しては、こちらで何とか工夫するしかない。
生徒が教科書を簡単と思うのは、そのマテリアルを教師がインプット中心に使うからだ。インプットはきっかけにして、そこからのアウトプットを中心に教案を作ればよい。
受験に役に立たないと考えるのは、今書いた難易度の問題にもなる。しかし、来年度は、教科書を使う頻度を多少減らし、他のテキストを使うことで回避する予定。要は、受験に役に立ちそうな(感じにみえる)テキストと洋物の難しめのものを使用する曜日を作り、生徒のモチベーションを持続させるという作戦。
最後の単純作業を嫌ってしまうことについて。具体的には、本文を暗記したり、何度も声に出して読んだり。
これは、語学学習においては必須だから、ある種無理にでもやらせていく必要がある。もちろん多少の工夫がこちらにも要求されるだろうとは思うが。小テストの形態、範囲を工夫したり、音読の方法もバリエーションを作るとか、強制的に読まされるのが嫌いなら、自由度の高い音読を推進するとか。

僕が個人的に思うことがある、教科書が浅い、という件。
高2にもなると、知的水準はかなり上がってくる。
かといって英語のレベルはそれに相応に上がっているわけではない。
ここが難しいところだが、一番簡単な対処法は、教科書を最初から最後まで使うという概念を壊して、内容的に引っ張りやすいものを選び、そのレッスンを時間をかけて扱うこと。それから、リスニングやリーディングマテリアルとして、オーセンティックなものを新たに付けたしやすいレッスンを扱うこと。
このあたりだろうか。

2番の雰囲気に関してはとても難しい。
これは、教師がクラスの雰囲気を変えようという姿勢が必要なのだと思う。
つまり、変えようともしないで、ただ嘆いてもうまくいかない場合が多いのだ。
雰囲気が暗くてやりにくいということであれば、明るくする工夫をする。
プレゼンが盛り上がらないとなれば、少しでも盛り上がる仕掛けを作る。
この姿勢が大切なのだと思う。
教師はうまくいかないことがあると、それを生徒のせいにしてしまうこともある。
それをいかに、意識的に排除して授業に臨むかが勝負だろう。


さあ、Landmark Ⅲがんばろ。

画像は合宿で行った精進湖で撮れた写真。逆さ富士。

『高校英語授業を知的にしたい』 三浦孝 他 編著

高校英語授業を知的にしたい −−内容理解・表面的会話中心の授業を超えて

高校英語授業を知的にしたい −−内容理解・表面的会話中心の授業を超えて

いろいろと忙しくて時間がかかったが、読み終わる。
三浦孝は冒頭で以下のように述べる。

、、、英語授業における内容吟味の欠如は、実は一種の危険すらはらんでいる。それは、長期間にわたって英文を読み、無批判に内容を受け入れる作業を続けることによる、洗脳的効果である。

これにはとても同感できる。ではどうすればよいか。
大事なのは、思い切って教材の取捨選択をすること。そして内容をうのみにしない仕掛けを時として作ること。
検定教科書を使用するにしても、それを恐れずにやることだろう。
内容的に「浅い」と感じたら、そのレッスンは避ければよいし、
この内容は良くても、構成が危ういと思えば、その欠陥(に見えるところを)批判的に読めばいい(悪い例として)。

この考え方は、英語授業の定型にも一石を投じることができる。
オーラルイントロで、教科書の中身に触れ、本文に入る、そして、内容理解の後で、
なにか内容のreproductionを行う。全部英語で行う。
このような流れで、扱っている英文が内容的に問題があるもの、もしくはとてつもなく退屈なものであれば、恐ろしいことである。生徒の体にしみこむものは「いい」内容であるべきだし、その内容に疑問や反発心を持ったって構わないわけである。

この本には、そうならないための方策が書かれている。全部が全部実行可能かというと、そうでもないが、とても参考になる。

Landmark Communication English 2 Lesson 5


このレッスン、題名は Science of Love。生徒の興味が引きやすいかというとそうでもない。導入はオーラルイントロではなく、まずは恋愛といえば歌ということで、恋愛の始め理の歌1曲、お別れの歌1曲を聞いてディクテーション。その際、聞き取らせる言葉は恋愛というトピックには欠かせない語彙を。lie dream die open など。
その後はいつものように読解を発問中心に行う。1stリーディングは、このレッスンが人が恋する理由を3つ扱っているので、それぞれの理論を40字で要約するタスクに。ここで、生徒の読みの正確さが如実に出る。この要約へのフィードバックは最後に渡して、自分の読みの浅さや深さを確認させた。

発問によって読み進めていくやり方には生徒は完全に慣れてきて、英問英答にもめげなくなってきた。橋渡し推論発問、今回は基本的には口頭ではなく書かせて答えさせる形を。こちらの方が無理のない形か。

最後のタスクは悩みに悩み、ライティングタスクを。

ヘレンフィッシャーという脳科学者が最後のパートに出てくる。彼女はTEDにも出演している。パートに書いていない彼女の理論を紹介。それは人間は4類型に分けられて、その4類型の相性は決まっていると。

だから、自分がどの類型に属するのかをフィッシャー氏が出している指標に合わせて考える。その後、自分のパートナーはどの類型の人がいいのかを教える。ここで盛り上がる予定だったが、むしろ自分の類型を決める方が楽しそうだった。

自分の類型を考えるのには英語を読まなければいけない工夫。性格はこうだとか、好きなスポーツの種類はどうだとか。例えば類型の1つ「冒険家」。

EXPLORERS (dopamine)

Traits: Seek novelty, risk taking, spontaneity, energy, curiosity, creativity, optimism, enthusiasm, flexibility, spontaneous generosity, autonomy, liberal, untraditional, irreverent, get bored easily, adaptable, many interests.

Words: 'Adventure' is the word most often used by Explorers as they describe themselves and what they are looking for in a mate. The other nine of their top ten most-used words (in descending order) are: venture, spontaneity/ spontaneous, energy, new, fun, travelling, outgoing, passion and active.

Exercise: Dangerous, novel, exciting things, like mountain climbing, sky diving, car racing, scuba diving; and action oriented things like sailing, swimming, kayaking and running.

最後には、自分がその類型を選んだ理由を例も含めて英語で書くということに。その際、traitsの欄から自分に最も合致している形容詞や動詞を選ぶと。狙いは自分を形容する英語の言い方を知ってほしいということ。

今、その英文を読んでいるが、中々楽しい。このレッスンはまあまあ成功か。

画像は先日飲んだ南アフリカのワイン。とてもすっきりしていて絶品。