『史上最悪の英語政策』雪は溶けた
- 作者: 阿部公彦,氏デザイン(装丁デザイン)
- 出版社/メーカー: ひつじ書房
- 発売日: 2017/12/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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読了。とても読みやすく、明快な本。
社会科の教員にも読んでもらい、感想を聞いたところとてもうまい文章で、面白かったとの感想。
僕も面白く読みました。
気になったところ、2点ほど。
1
TOEICのポリシーを批判する文脈で、筆者はこのテストが「語学学習の意義を「技能」の習得としかみない」ポリシーを持っていることを問題視しています。
では、TOEICやTOEFLがだめなら、現行のままで英語の入試問題はいいのか、ということになりますが、僕なりの答えはNOです。
授業で大量の入試問題を扱いますが、いい問題を探すのはなかなか大変です。今、様々な大学で問題ミスが問題になっていますが、
英語でも答えが出ないもの、答えが複数あるのではないかというもの、あると思います。というかあります。(信じられないくらいまとまりのない英語の文章を用いてどうしようもない問題を作る大学も多い。受験生をバカにしています。その文章、生徒たち暗唱したりもするんですよ。)
それと業者のテストを比べると、正確さは業者の方があるかもしれません。(もちろんいい問題の多い大学もたくさんあります)
でも、それで全てがいいかというとそうでもない。
スピーキングのテストがあるのは評価できると思います。
東京外大は自らスピーキングのテストを作る試みを始めました。
結論から言うと、もっと公(オオヤケ)感のあるところが、いい人材を見つめて本気で英語テストを作ればいいのです。スピーキングを含めて。
やはり、いくつかの業者が入試において極端に利益を上げるというのはいびつです。
2
次は安河内さんの「明るく楽しいスタイル」は評価するけれども、「公教育の場でこうしたお仕着せの「楽しさ」や「明るさ」が強制されることに」筆者が違和感を持っているということです。
この視点はとても自由を重んじる文学者らしい言い方だと思います。
筆者は生徒が学校で学習を進めていく上で、そのような「お仕着せ」を拒絶する権利を生徒は持つべきであると言っているのです。
楽しくあれ!明るくやれ!というのは「感情ファシズム」だと。
教師は時折、生徒の立ち居振る舞いに物申すことがあります。英語の授業でも僕は「教室中に声が届くくらいの声量は持とう」と言います。
これは、コミュニケーションをとる上で大切なことだと思うからです。彼らが成人しても大切だと思います。
でも、常に楽しげでいるというのは、なかなか大変。筆者は、そのような強制は「批判精神や分析力」をも奪うのではと危惧しています。
以上レビューでした。
最近東京はよく雪が降りますね。雪にまつわる歌ってたくさんあります。
最近はこの歌が思い浮かびます。東京の雪なんて映画一本見ているうちに溶けちゃいますが。