「意味順」のすすめ




先日ある学会の研修会で京都大学の田地野先生の講演を聴く。大変興味深かった。来
年度から中1を担当することになるであろうから、その意味でも聞く価値のある講演でした。以下、その講演をまとめる必要が出てきたので以下のように。



田地野彰先生の講演は2本だてで行われた。まず最初の話題は京都大学が行った英語教育の取り組みである。学部間、教員間でバラバラに行われていた英語教育をまとめ、目的を明確化した上で授業を行う試みの紹介である。京都大学では英語の授業目標をEnglish for Academic Purposesを習得することとした上でカリキュラムを作り直したというのだ。4技能をうまく伸ばすカリキュラムに編成するだけにはとどまらず、全学部の主要な語彙を取り出し、語彙のデータベースを構築したそうだ。普段、中学高校の英語教育にだけ興味が行ってしまいがちだが、大学の英語教育事情をお聞きできて大変興味深い内容であった。
もう1つは講演の名前にも現れているように、「意味順」の紹介が行われた。
まず田地野先生は英文法を教える際、教師は生徒が目指す目的地を明確に示す必要があると仰った。京都駅から京都御所に行く道筋を例えとして使われていた。出発の京都駅周辺からいたずらに、順番に細かくその土地について説明するのではなく、まずは大まかに全体の地理を伝え、その後そこまでの道のりに必要な情報だけを教授すべきというのだ(この場合の目的地とは、8割正しい英語と先生は仰っていた)。その大まかな道筋こそが「意味順」である。語順を重んじる英語では語順が肝である。すなわち「だれが、する・です、だれ・なに、どこ、いつ」というものである。
この順番を誤ってしまうことは、Global Errorを犯すことになるので、注意を喚起すべき間違いである。この語順が守ってあれば、他で起きる間違いについては、場合によっては単なるLocal Errorになり得るということである。ここでは、学校英文法ではあらゆる文法事項が等価値であるかのように教えられることへの批判でもあろう。またこの間違いの種類に関しては、ブロークンイングリッシュとそうでない英語との区別にもなると、田地野先生は著書『「創る英語」を楽しむ』でも書いている。
この「意味順」あれば、「だれ」、「する・です」などの項目に文法事項を落としていけるので、教わる方もどの部分を教えられているかが理解しやすいということであろう。例えば「する・です」のところには時制や相などが関係してくる。
この「意味順」はあらゆる技能で便利に使われる。話すときの文「創り」、聞くとき、書くときの注意の向け方、読むときの帰り読み要らずの目の動かし方。
興味深い内容であった。


この講演を聞いた後、この本を読んでみた。

「創る英語」を楽しむ―「暗記英語」からの発想転換 (丸善ライブラリー)

「創る英語」を楽しむ―「暗記英語」からの発想転換 (丸善ライブラリー)

田地野先生の「意味順」のエッセンスが書かれている。軽く読めるが示唆深い。

画像は仙川で食べたインドカレー