『はじめてのアクションリサーチ 英語の授業を改善するために』 佐野正之

 

はじめてのアクション・リサーチ―英語の授業を改善するために

はじめてのアクション・リサーチ―英語の授業を改善するために

 

 本書におけるアクションリサーチとは「教師が教室での問題を克服し、授業改善を図る(p. 5)」ためのリサーチである。

 

筆者はこの考え方が、教授理論で形成する授業改善や、著名教師の名人芸を真似た授業改善とは違い、授業を自分で振り返り、そのときに見つけた問題点を改善すべく、授業で工夫をし、そしてその結果、問題点がどれくらい改善したのかを検証するという改善方法だと筆者は言う(pp. 5-6)。

 

この授業改善法は自分の授業を振り返る行為を客観的なものにして、継続的な取り組みになるという意味で有用だと思う。このリサーチで欠かせないのは問題点を決めた後で行う事前調査である。それはすなわち、授業で何をどのように改善するのが正しいのかを自分でなるべく客観的になるように心配りをした情報をもとに、前もって考えておく必要があると言うことだ。そして、その改善が問題点の克服に至ったかどうかを終わりでまた検証する。そのプロセスをまとめてリサーチが終わりになる。リサーチなのだから、何らかの形で文章にまとめることにもなろう。

 

このようなプロセスは確かに手間のかかるものだが、場当たり的に授業を改善し、後に何も残らない改善プロセスに比べれば、はるかに自分、そして他者のための蓄積になることは間違いがない。

 

真の意味でのリサーチではないので、統計処理などを欠いていることから科学的なリサーチとは呼べないが、実際のところ一般教員が日頃の授業をこなしながら、本格的なリサーチを行うのは至難の技である。

 

その意味では、このアクションリサーチは現場にあった「リサーチ」法だと思う。また、教科での取り組みとして学期に一つでもアクションリサーチの報告があると、会議が非常に意義深いものになるであろう。